味の素冷凍食品株式会社様
実施概要
導入背景
しあわせリーダーズ 朝野:今回コーチング研修を導入された背景を教えてください。
佐野様:マネージメントとリーダーシップで私は2つのことを大切にしたいと思っています。まず、「部下を深く思いやる、部下は安全で守られていると感じる、部下に安心感を与えられるマネージメント」しかし、それだけだと温かさだけなので、同時に「将来の可能性を見出してあげる、リスクを取る、調整を取る、エネルギーを与えられるリーダーシップ」です。
この「安全・安心」と「チャレンジ」を大切にする方法はいくつかあると思いますが、これまでのトップダウン型のマネージメントスタイルだけではなく、各個人が主体的に考え、自分で未来をどう作っていくかを考えていく必要がありました。去年のエンゲージメントサーベイの結果を見ても残念ながらベストなスコアとは言えなかったことは、部下の働き甲斐、エンゲージメントを高める為にも、これまでとは違うマネージメントのアプローチが必要だという気づきにつながりました。
朝野: トップダウン型マネージメントスタイルのやり方でも、安全やチャレンジは確保できるのでは?
佐野様: 確かに、トップダウン型のやり方でも家父長制的に「守っている」、という点で、安全と言えるかもしれません。しかし、それは支配というか、そういう安全性だと思います。そして、トップダウン型マネージメントスタイルだと部下が自らチャレンジをする姿勢を奨励する事は難しく、むしろ対局的であると思います。
朝野: 佐野さんが「安全・安心」と「チャレンジ」を大切にするというお考えに至ったのはなぜですか?
佐野様:元々私は性格上、受け身タイプの人間で育ってきているので、和を好む、安全性を好むと言いますか、その様な環境が心地良いという事はありました。ですので、部下には「いいよ、いいよ」と言っている方が心地良く、逆に厳しくすることは結構苦手でした。しかし、やはり優しさだけでは甘やかす事になってしまう事もあるので、時には厳しさを取る事も大切だと考えるようになりました。
また、以前海外赴任をしていた際、とても自分自身成長した時期だと思っていますが、先輩からは結構仕事を任せてもらった経験があり、自分の個性、やり方を尊重してもらい、色々とチャレンジが出来た経験があります。その経験はとても影響していると思います。
朝野: 作りたい組織、チームのイメージを教えていただけますか?
佐野様: 研究所なので、食品の仕事等、当然目の前の仕事を主にやっていますが、遠い未来の仕事に手を延ばせる組織になりたいと思っています。言い換えますと、目の前の仕事に追われるのではなくて、自分達で未来を創る事ができるような組織、チームですかね。会社の発展に寄与して、技術者魂、開発者魂がある組織、チームにしたいですね。
朝野:研修前の管理職のみなさんの関心や意欲は?
松谷様:研修前は管理職の中でもコーチングを学ぶ事に対しての意欲にはバラツキがあったと思います。後ろ向きというわけではありませんでしたが、それほどニーズを感じていない人も正直いたようです。
朝野:コーチング研修を受講した後どの様な変化がありましたか?
佐野様:なんと研修1日目が終わった際、全員がコーチングに対してポジティブになっていて、当初あまり関心が無かった方も、皆新たな気づきを得た感じでした。しかし、実践していくと難しさは当然あったと思いますが、スタート時に必要性、有益性を感じてもらえたことはその後の実践を継続する上でとてもよかったと思います。
松谷様:まず、管理職の中で共通言語が出来た事が良かったです。様々な場面で、「今の場面はコーチングの方が良かったよね?」とか、「今はティーチングだよね?」、と話したり、「一緒にドボンは駄目だよね」(弊社注:部下の問題を上司が抱えてしまい一緒に悩んでしまう状態を研修中に「一緒にドボン」とお伝えしました)など。(笑) 管理職同士で状況課題を一緒に理解する事ができ、一緒に成長できていると感じられる様になったのは大きいと思います。
朝野:松谷さんご自身の経験も教えてください。実際にコーチングをする事によって何が変わりましたか?
松谷様:部下については、まだそこまで変化を感じているわけではないのですが、コーチングをする事によってここ最近私が思いつかなかった様なアイディアが部下から少し出てきているので、そこは少し変化と言えるかと思います。
朝野:具体的に何を変えたのですか?
松谷様:おそらく今までなんだかんだ私は部下に対してティーチングをしていたのではないかと思います。課題を言ってきてくれても、私がすぐ答えを出してしまっていたのでしょう。しかし、今は私が答えを出さずに、部下にまずは考えてもらったり、持ち帰ってもらっています。
朝野:持ち帰ってもらうって、相当勇気がいりますよね。。。。時間がかかりますよね(笑)
松谷様:そうなんです。時間は掛かりますが、後で本人から答えを持ってくる様になっています。実際私が考えるより良い答えが出てきていたりします。正直部下の答えを採用する事によって成功するかどうか見えない部分もありますが、その様に答えが出てくるのはとても嬉しい変化ですね。
朝野:そうだったんですね。それが出来たのも松谷さんが部下の方々を信頼しているからこそできたのでしょうね。
朝野:他に何か変化を感じることはありますか?
佐野様:感じるのは、実際に部下との会話が増えてきていること!実はコーチング研修をする前から、会話、コミュニケーションの量を増やそうとしていたのですが、コーチングを取り入れた事により、部下の思いを聞き出す様な、コミュニケーションの内容、質も上がってきたし、共感する事も出来てきている様に思います。ただ単に「部下の話を聞くよう」方針だけを出しでも動かなかったと思いますが、実際にコーチングでその方法が手に入ったからこを実現する事ができたと思います。
松谷様:育成に対する意識が変わったと思います。部下との関わり方が変わったと言いますか、、、例えば、部下との会話でも今までは業務のやり方に関してばかり話していましたが、コーチングを導入した事により、最初には雑談を入れたり、本人の内面に入る事ができるような会話も増えてきている気がします。聞き方の練習をコーチングのセッションでした事により、事柄を聞くだけではなく、相手の内面を聞くようになっていますし、何よりも雑談も大事という言葉が出てきていますね。
朝野:雑談が大事と言える様になってきているのは、ものすごいパラダイムシフトですね!
変化のその先について
朝野:この変化が続くと、どんな未来が描けそうですか?
松谷様:今までに出てこなかった様な、”イノベーション”、新しいとか、斬新とか、そういう技術、製品が出てきて欲しい。そういう未来を描きたいと思っています。今までのトップダウン方式だと出て来ないと思いますが、若い世代の社員の人達から多様な意見が出てくることによって実現できるのではないかと思っています。
佐野様:今まではマーケティング部門が考えたものを基に基本製品を作っていましたが、それだけではなく、我々の開発部門が主導で生み出す製品も生まれるはずです! 実はシェアNo.1の「冷凍ギョーザ」のイノベーションも、開発部門主導で生まれたんです。
朝野:それはイチ消費者としても楽しみです!
導入を検討の組織へ
朝野:主催者(佐野さん、松谷さん)側として、今回のコーチング研修、コーチングの導入がうまくいったのは、何が起因していると感じられますか?
松谷様:まずは、元々組織の課題(社員のエンゲージメントレベル向上)が管理職同士の共通認識だったという事もあり、皆参加者がスムーズに受け入れてくれたのではないかとも思っています。また、会社のカルチャーなのか、やってみようよ。という事に対して協力的なカルチャーが根強いているという事もあるかと思います。研究所だからか、真面目な風土はあるかと思います。
朝野:なるほど、研修の導入前に共通の課題認識として共有されていたことがポイントだったのですね。
加えて、弊社からみて成功要因と感じたことがあと2つあります。ひとつは、弊社とのパートナーシップつまり業者おまかせではなく、主催者としてオーナーシップをはじめから最後まで離さずにいたこと。
佐野様:そうですね。自分達の組織の課題を自分達で挙げて、自分達で解決しようと思って進めた事なので、よりオーナーシップを持てたのだとも思います。
朝野:もうひとつは、今までのやり方がダメだったからではなく「引き出しをひとつ増やしましょう」というアプローチだったこともあると感じます。
佐野様:確かに。それにコーチングが万能というわけではないですしね。
弊社について
朝野:弊社について、どういう印象をお持ちになっていますか?
佐野様:理論、知識が盛沢山というベンダーさんというよりは、それだけでなく、しあわせリーダーズさんは、マインド、幸せに働きかけてくれる印象がありました。そういう意味で、最初のスタート、導入として非常にふさわしいと感じました。すぐにテクニックに走るのではなくて、自分達の組織に合わせてカスタマイズしてもらえた事も非常に魅力的でした。
朝野:しあわせ中心のリーダーシップについて、どう思われていますか?
佐野様:ベースに幸せな状態があってこそチャレンジができると考えています。それが無くてチャレンジさせられると、支配されているとなりますし、また一方で幸せだけだと成果を求めない。となるので、そこのバランスが大切だと思っています。安全性+チャレンジですね。また、実際、幸せでない人に対してチャレンジをさせてもチャレンジしないのではないでしょうか。お金や地位だけが重要な環境であったり、幸せでないと、まずは安定を求めるのが先、サバイバルモードになりますよね。しかし、やはり、心が幸せ、安定していると、色々な事にチャレンジできるのではないかと思います。
松谷様:利益だけを中心に考えているリーダーだと、110%ぐらいしか達成しない気がしますが、夢や幸せを大切にすると150%, 200%ぐらい達成できる気がします。社会貢献など、結果・成果の幅も変わってくると思います。
朝野:佐野様、松谷様、質問はこれで以上になります。ご協力いただきまして本当にどうもありがとうございました。後に何か伝えたいことはありますか?
松谷様:実は本日このインタビューの前に、私から管理職全員に提案しまして、今後1on1を導入する事になりました!今回のコーチング研修が無かったらこの考えには至らなかったと思っています。
朝野:なんと!そんな嬉しい日に偶然インタビューをさせていただいたんですね。どうもありがとうございます!!
プログラムでよかった点(全コメント、無編集)
プログラムで改善すべき点(全コメント、無編集)
全コメント・無編集
担当コンサルタントコメント
山縣いつ子
私自身は、これまで数多くの企業や中間管理層の方々にコーチングや1on1面談についての研修を行ってまいりましたが、味の素冷凍食品さんほど短期間でコーチングを通じて部下に真摯に向き合おうとした組織はそう多くはありません。部下のエンゲージメントを上げるという全体の目的がありつつも、個々で部下とのコミュニケーションに大きな課題がない限りは、長年やってきたマネジメントスタイルをそう変えられるものではありません。そんな企業さんが多い中、研修とフォローの合間の課題、コーチングを実施してみる、仲間でその経験から学んだことを何度も振り返り、真剣に、前向きにトライし続けていらっしゃいました。
その結果、受講者の皆さんが自身の「リーダーシップ」のあり方に気づいていくというところに結びついていく・・・そんな受講者の皆さんの熱心さに私自身感銘を受けました。その後徐々に部下への関わりを変えていくプロセスは、周りへの影響も今後変えていくのだろうなあと組織のコミュニケーション文化が変化する兆しを見させていただきました。
朝野かおり
本事例を振り返ってみて、まさに「お客様と息があった」案件だったと感じています。まずは、お客様が変えたい、変わりたいという情熱が明確におありでした。そこへ私どもが呼応するように情熱を引き出され、もちうる経験と専門性を使って息をあわせてご支援させていただきました。
プログラムの中では、まず「リーダーとして創り出したい未来」について共有いただきました。受講者のリーダーのみなさんは、社のビジョン「食と健康の課題を解決し、人びとのウェルネスを共創します」をご自分の言葉で落とし込み、その創り出したい未来に向かってコーチング・スキルを身に着けることを、しっかりと紐づけされておられたことに感銘を受けました。
「手抜きでなく手間抜き」のツイートが最近話題になりましたが、社会的意義を感じながらマネジメントを行う方の多いこの会社から、そのようなツイートが出されるのが決して偶然ではないことが今回のおつきあいを通してわかります。社会的意義を感じながらお仕事をする方は(=ウェルビーイングの大事な要素のひとつ)、創造性も生産性も高いというのは本当ですね。「コーチング」という新しく手に入れた引き出しとともに、その素晴らしい「あり方」でこれからも社会を牽引していかれるリーダーのみなさんを心から応援しております!
© 2023 Shiawase Leaders, LLC All Rights Reserved